作家、植田佳奈さん。
彼女の作るものはとても不思議で、
そして、とても心地よい。
大枠としては、陶芸なのだけれど、そこから出来上がるものは自然にとても近しいもの。
陶土で自然を生み出す方、
というのがしっくりとくる印象です。
川辺にあるような石や、海岸の貝殻、
ふじつぼなど、そんな自然から生まれるものを作っている植田さん。
今回ご紹介するのは多孔質の石ころと、
陶の石ころ。
そして、石ころを積み重ねた積み石です。
▲多孔質の石ころ
多孔質の石ころは、軽石のような気泡がプツプツと空いていて、そして軽い。
でも軽石ほどザラザラしていなくて、指を強く押し当てるとちょっとザラザラするかな?ぐらいの感じ。
全体的につるんと丸っこくて角がない。
まるで上流から転がり流れてきて、いろんな角が取れ下流に行き着いた石ころのよう。
この石ころの気泡って、
どうやって作っているんだろう?
そういう土があるのかな。と思っていたら、なんとメラミンスポンジで作っているそう。
あの、擦るだけでピッカピカになるという昭和生まれの人たちが当時びっくり仰天した例のアレです。
多孔質の石ころは、そのメラミンスポンジに陶土を染み込ませ、焼成。
メラミンスポンジは焼いている間に弾け飛び、陶土だけが残るのだそうです。
言っていることはわかるけれど、目の前の多孔質の石ころを見ると、全然メラミンスポンジに結びつかない不思議な感覚。
でも、人の手が介入しない弾け飛ぶという部分が自然の産物に近しくなるポイントなのかもしれません。
もう一つ、違う技法で作った陶の石ころ。
多孔質の石ころとはまた違う雰囲気の石ころは表面ツルツルすべすべで、石ころのようであり、卵のようでもあります。
表面をツルツルになるまで磨いた陶の石ころは、多孔質の石ころと比べて重さもかなり石に近い。
よーーく見てみると、釉薬を表面に使っている分、貫入(ヒビ模様)も入っています。
それがより、卵みたいに見える。
それも恐竜の卵です。
▲陶の石ころは、飾る以外にも重さがあるのでペーパーウェイトにもいいです。
▲陶の石ころには、穴が開けられています。
まるで呼吸をしているよう。
そして最後にご案内するのが多孔質の石を積み重ねてできた、積み石。
子供の頃、石ころを重ねて遊んだ記憶が蘇るような作品です。
▲積み石 2連
▲積み石 3連
積み石は、最初はひとつひとつ石ころの状態で焼いた後に重ねてまた焼くのだそう。
そうすることで、釉薬が溶け出し石ころ同士がくっつくという仕組み。
接着剤を使うことなく、自然の重力に従ってくっついていく。
そうした自然の助けを借りているところも植田さんの作品の魅力なのかもしれません。
▲小石なのか貝殻なのかそんな自然に付着したような意匠の石ころも。
石は昔から神聖なもので、関守石や留石など家の中での守り石として使われていたりもします。
でも、ただ拾ってきた石を飾るというのはちょっとなかなか違うし、逆に拾ってきた石は風水的に良くないという話もあったりします。
植田さんの作品は石のように見えて、陶芸。
でも、本当にほぼほぼ石。
そんな不思議な境界線にいます。
自然に目を向けて、時間をかけて
生み出した石。
植田佳奈さんの石ころこそ、まさに部屋に飾る「石」としてぴったりなのかもしれません。
